高度情報化社会を構成する画像提示機器の視覚系への影響の定量評価法と予防基準の確立

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15591868
• 研究機関: 札幌医科大学
• 研究代表者: 鈴木 康夫 札幌医科大学, 医学部, 講師 (40221329)
• キーワード: 瞳孔 / 近見反応 / 調節 / 輻湊 / IT / 3D

研究概要

本年度、我々は、近見反応時の瞳孔運動とこれまでの報告で映像負荷による影響が生じやすいとされてきた調節のステップ応答とを同一被験者群で比較し、生態影響評価における有用性を検討した。
方法:屈折度が、+/-0.5Dの健康成人8名(18歳から25歳、平均20.5歳、男性、女性各4名)を対象とした。昨年度の負荷実験と同一の画角29インチの3Dテレビ(29N3D,3D Televison)と液晶シャッター式眼鏡(60GX, NuVision)を用いて、CGによる3D映像と実写の3D映像(各約4分間)を交互に計30分間負荷した。映像負荷前後の近見反応時の瞳孔運動は瞳孔反応測定装置(浜松ホトニクス、C7364-SA)を用いて、調節のステップ応答はAA-2000(NIDEK)を用いて計測した。近見反応を誘発する調節刺激の速度は前回と同様の0.3D/秒とし、振幅は6Dと8Dの2種類とした。各々の調節負荷を各3往復(遠1→近1→遠2→近2→遠3→近3→遠4)加え、初めと最後を除く2往復(近1〜近3)を解析した。解析項目は、両眼の瞳孔径とした。調節のステップ応答はステップ量を6D、8Dとし停止時間5秒で加えた調節負荷に対する調節応答を各眼6回測定した。
結果:振幅8Dの調節負荷による測定パラメータでは近見反応検査装置による瞳孔径縮小率の平均値が3D映像負荷前の51%が映像負荷後には48%となり有意の低下を示した(N=16、P<0.05、対応のある両側t検定)が他の瞳孔運動のパラメータ、調節のステップ応答のパラメータには映像負荷前後で有意の変化は認められなかった。振幅6Dの調節負荷による測定パラメータには3D映像負荷前後で有意の変化は認められなかった。
結論:調節ステップ応答に有意の変化をきたさない立体映像負荷で、近見反応時の瞳孔径縮小率が有意に低下した。近見反応時の瞳孔運動計測は、映像呈示機器の視機能への影響を調節のステップ応答検査より鋭敏に検出する可能性があり、近見反応検査装置による瞳孔運動計測はIT眼症の定量評価を行う際に有用と考えられた。

研究成果

• [文献書誌] Suzuki Y, Shinmei Y: "Resets of torsional eye position errors in different lighting conditions."Neuroscience Research. 46. 95-103 (2003)
• [文献書誌] Ohtsuka K, Sato A, Kawaguchi S, Hashimoto M, Suzuki Y.: "Effect of steroid pulse therapy with or without orbital radiotherapy on Graves' ophthalmopathy."Am J Ophthalmol. 135. 285-290 (2003)
• [文献書誌] Suzuki Y, Washio N, Ohtsuka K.: "Three-dimensional eye movement analysis of superior oblique myokimia."Am J Ophthlmol.. 135. 563-565 (2003)
• [文献書誌] Suzuki Y, Onda Y, Katada S, Ino S, Ifukube T.: "Effects of an eyeglass-free 3D display on the human visual system."Jpn J Ophthlmol.. 48・1. 1-4 (2004)
• [文献書誌] Suzuki S, Suzuki Y, Ohtsuka K.: "Convergence eye movements evoked by microstimulation of the rostral superior colliclus in the cat."Neuroscience Research. 47(In press). (2004)
• [文献書誌] Suzuki Y, Washio N, Ohtsuka K.: "Leaky neural integration observed in square-wave jerks.-"Jpn J Ophthlmol.. 47. 535-536 (2004)