研究概要 |
われわれは眼アレルギーの増殖性病変形成のメカニズムを,特に樹状細胞-オステオポンチン系の観点から解明していく研究を計画した。樹状細胞が結膜増殖病変の形成に関与するのか,関与するとすればどのようなメカニズムがあるかを解明する研究を行った。 本年度には,結膜リンパ濾胞におけるオステオポンチン陽性樹状細胞の密度と病態との関連の解析を行った。卵白アルブミン(OVA)感作後,2週間目に点眼刺激によって発症誘導する実験的アレルギー性結膜炎のマウス実験系を用い,結膜濾胞について免疫組織化学的解析を行った。結膜濾胞は結膜における粘膜免疫反応の中核となる組織であり,結膜関連リンパ装置(CALT)を形づくっていると近年考えられてきており,アレルギー反応の慢性化,重症化においてもその免疫学的意義が注目されている。OVA感作を皮下に行った後,OVAを点眼した。点眼は2週間後から毎日7日間連続して行った。一方OVA未刺激の対象群では,sham inoculationとして,生理食塩水を点眼し,比較した。さらに各群において,ステロイド点眼治療をOVA点眼開始後1週間後から行い,OVA全身感作4週間後に,結膜リンパ濾胞におけるマスト細胞,好酸球,CD4陽性T細胞,CD8陽性T細胞ならびにオステオポンチン陽性(CD83)陽性細胞の密度や組織学的局在を計量組織学的方法で比較検討した。OVA感作群では,マスト細胞,好酸球,CD4陽性T細胞およびオステオポンチン陽性細胞の密度が有意に上昇しており,これらはオステオポンチン陽性細胞を除いてステロイド点眼治療によって,有意に低下が見られた。コントロール群では上記の炎症細胞の密度には変化はなかった。これらから,結膜アレルギー炎症におけるオステオポンチン-樹状細胞系の炎症反応はステロイドに制御されない非特異的免疫機構を介することが示唆された。
|