研究概要 |
1)網膜色素上皮(RPE)特異的なノックアウトマウス RPEに選択的な活動性をもつTRP1(チロシナーゼ関連タンパク1)遺伝子のプロモーターにCreリコンビナーゼ遺伝子を融合したトランスジーンをもつTRP1-CreマウスとレチノイドX受容体α(RXRα)遺伝子をfloxしたマウスを交配することによってTRP1-Cre : RXRα^<f1/f1>マウスを作成した。このマウスはRPE選択的にRXRα遺伝子を欠損することが確認された。RPE細胞は形態・機能ともに異常で、視覚レチノイド関連タンパク(RPE65,CRALBP,RGR)の発現が減少していた。視細胞外節の短縮と変性と網膜電図上の反応減弱が認められた。このことはRPE特異的なノックアウトマウスがシステムとして機能し、RXRαがRPEの形成と維持に不可欠な分子であることを明らかにした。 同じくTRP1プロモーターを用いてタモキシフェン感受性Cre (Cre-ERT2)のトランスジェニックマウスを作成した。このマウスとZ/APレポーターマウスを交配して遺伝子組換を評価した。タモキシフェン1mgの腹腔内投与によって約70%のRPE細胞が組換陽性となった。1%以下の視細胞で組換陽性となったが、他の組織では陽性細胞は検出されなかった。TRP1-CreERT2マウスは誘導型網膜色素上皮に遺伝子のシステムとして有用であることが示された(投稿中)。 2)角膜上皮特異的ノックアウトマウス ケラチン14のプロモーターを用いたCreERT2トランスジェニックマウスを作成し同様に遺伝子組換を評価した。タモキシフェンの点眼によって角膜上皮で遺伝子組換が生じた細胞の比率は10%以下で、皮膚や消化管の上皮にも組換陽性細胞が点在していた。角膜上皮における組換の効率と細胞特性を高めるには他のプロモーターを検討する必要がある。
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