研究概要 |
平成16年4月より主たる研究者である橋本が藤田保健衛生大学医学部に転勤となり、同大学医学部、杉岡篤助教授と共同で研究を開始した。杉岡助教授は以前よりマウスを用いた肝移植実験においてすべての組み合わせで免疫寛容が誘導されることを解明している。 1.藤田保健衛生大学における臨床生体肝移植の開始 平成16年6月7日から生体肝移植を開始し、現在まで9例の生体肝移植を実施した。23歳の1例を血栓性血小板減少性紫斑病により失ったが、残りの8例は健常であり、小児症例6例では免疫寛容誘導が期待される。現在、基礎となるリンパ球クロスマッチなどの測定を行い、経時的に血清サンプルを保存している。 2.臨床肝移植症例における免疫制御関連液性因子の解明 計画ではプロテインチップを利用し、関連の新規蛋白を解明する計画であったがSELDIプロテインチップは1検体の測定に非常に高額を要することが判明し、現在までのところ過去の検査値のみで新規の測定値を得ていない。そこで、現在外来にて管理中の免疫抑制剤離脱症例と、そのほかの症例の免疫状態を比較する目的で免疫関連サイトカイン(IL-4,IL-6,IL-8,IL-10,IL-12)を選択して経時的変化を測定し、評価中である。 3.FK506による免疫寛容誘導のブロック 免疫寛容誘導の機序を解明する手段として、容易に誘導される免疫寛容をブロックすることが有用であろう。 杉岡の研究ではマウスにおける肝移植ではいかなる組み合わせでも免疫抑制剤の投与を必要とすることなく寛容が成立することを証明してきた。しかし、このラットの系では初期に激烈な拒絶反応を発症し、その後に免疫寛容誘導を惹起することが知られている。そこで、初期の拒絶反応を防止することによる影響を明らかにするために有効な免疫抑制剤であるFK506(タクロリムス)を投与した。この処置により拒絶反応は防止できたが代わりに免疫寛容誘導がブロックされた。
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