研究概要 |
平成15年度の成果:ラットモデルにおいて皮膚・筋肉内の微細血管網(choke血管)を肥大化させ、それによりコラーゲンスポンジ製人工真皮(ペルナック^<TM>、グンゼ、京都)を栄養する「人工真皮弁」の生物学的作成(synthesis)に成功した。 方法:1.人工真皮の皮下埋入 ウィスター系ラット(200g、8週齢)の片側背部に頭尾方向8cm横幅2cmの長方形の皮弁を作成し、皮弁内頭側より、胸背動静脈、肋間動静脈、深下腹壁動静脈のほぼ同程度の血管径と血行領域vascular territoryを持つ3本の血管径を含めた。これを、3-territory flapと呼称する。このうち、中部の肋間動静脈を結紮・切断して、頭側・尾側の胸背、深腸骨回旋血管の2本を血管茎とし、皮弁外周は肉様膜まで切開して、皮弁と母床のつながりは2本の血管茎のみの双茎島状皮弁bipedicled island flapを作成した。反対側背部は同一個体内のcontrol sideとした。ここで、表層にシリコン膜を付着したコラーゲンスポンジ製人工真皮を、コラーゲンスポンジ面をbi-pedicled island flap裏面の肉用膜(panniculus carnosus)面に固定する複合体を作成した。人工真皮は皮弁よりも大きめとし、母床面や皮弁断面からの皮弁への血行再開を遮断した。2.血行の評価 1,3,4,5,7,9日目に、血管茎を胸背動静脈のみとする単茎皮弁mono-pedicled disland flapとした上で、肉眼的・組織学的所見に加えて、レーザー画像血流と血管造影により人工真皮弁の血行付加vascularizationの状態を評価した。 結果:肉眼的・組織学的には人工真皮は皮弁の裏面に生着して人工真皮・皮弁複合体を形成していた。2本の血管茎のうち胸背血管のみとしても複合体には血流があり、生存していると判断できた。レーザー血流像ならびに血管造影像では、1日目からchoke血管の拡張により、複合体内に縦貫する主軸化axializeされた血管束が、徐々に成長する様子が経時的に確認できた。すなわち、血管茎を付加された「人工真皮弁」が生成された。9日目には、人工真皮のシリコン膜が脱落して、人工真皮面を内腔側としてロールを形成するものを認めた。この管腔構造を呈した人工真皮・皮弁複合体の血管造影でも主軸化血管束を認めた。以上より、微細血行の主軸化=長肥大化と、人工・生体組織の複合化(ハイブリッド)が、同時進行で、かつ、約7日間という極めて短期間で可能であった。重症熱傷や褥瘡への臨床応用が期待される。
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