研究概要 |
平成15年の成果:ラットモデルにおいて皮膚・皮下組織内の微細血管網(choke血管)を肥大化させ、それによりコラーゲンスポンジ製人工真皮(ペルナック^<TM>、グンゼ、京都)を栄養する「人工真皮弁」の生物学的作成(synthesis)に成功した。血管造影像による皮弁内血行形態の観察によると、ラット背部の3血行領域皮弁(3 territory flap)内の微小な血管網内に存在するchoke血管の肥大化により、3領域に分割していた血管網があたかも1本の主軸化した血管に成長するaxializationをきたすと同時に、人工真皮にも血行供給するvascularlizationが起こるためであり、この理論により再現性をもってハイブリッド型人工真皮弁を作成する基礎が確立した。 平成16年の成果:人工真皮弁の血行動態の経時的変化を詳細に解明した。2次元レーザー画像血流計による観察では、人工真皮には1日目は血流を認めなかったが、3日目より皮弁血管茎の領域(TD領域)に高血流(赤色)帯が出現した。5日目には赤色帯の若干の拡大延伸、7日目には皮弁中心部を皮弁茎中枢部(TD領域)から皮弁中部(IC領域)、さらには皮弁末梢側(DCI領域)まで縦貫する赤色帯を認めた。この高血流帯は、血管造影像でのchoke血管によるaxializationをきたした血管形態と極めて正確に一致した。すなわち、機能=血流と形態=血管構造が表裏一体となって人工真皮を5-7日間でvascularlizeしていることを明らかにした。 平成17年度の成果:平成15,16年の検討は人工真皮弁を移動・移植しない「in situ」モデルであった。生成した肥大血管網が身体の他の部位に移植しても安定していることを確認した。研究方法は、背側皮弁を腹側に作成した移植床に移行するもので、血管茎を一旦切断してマイクロサージャリー(微小血管吻合術)により頚動静脈または大腿動静脈に再吻合する遊離皮弁群と、血管茎がつながったまま移行する有茎移植群を検討した。各皮弁の生着範囲は、遊離頚動脈群94%、有茎非遮断群93%、遊離大腿動脈群82%、有茎遮断群81%の結果であり、axializeした血行形態は全群に於いて維持された。これにより、人工真皮弁を遊離皮弁として身体の他部位へ移植できることが証明され、消化管や尿道などの管腔臓器として人工真皮弁が臨床応用できることが示唆された。
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