研究課題/領域番号 |
15591909
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
井上 肇 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (60193603)
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研究分担者 |
打越 敏之 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (60130986)
長田 博昭 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (90121178)
塚田 久嗣 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助手 (60308476)
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キーワード | 真皮 / 再生組織 / 培養表皮 / 線維芽細胞 / フィブリン / 血管新生 |
研究概要 |
呼吸器悪性腫瘍患者に対し廓清術を施行する際、広範囲な気管切除を必要とすることがある。現在6cm以下の気管切除時には各種の手術法が考案された結果端端吻合が可能となり、標準的な気管再建法となっているが、広範囲切除における症例においては、気管断端部の吻合を不可能とし、その結果失声を招く。これは患者のQOLを大きく低下させる。一方、仮に端端吻合が可能な症例でも、一定期間の頸部固定は、患者に多大なストレスをかけることになり、本来好ましいこととはいえない。そこで、摘出した気管組織を界面活性剤で処理し組織中の細胞を脱落させ、無細胞化を行い(特許出願中)、得られたこの無細胞化気管を鋳型として用いて気管再建を試みることでその有用性を評価した。本考案による無細胞気管Scaffoldの開発は、冷凍保存気管や脳死同種気管移植とは異なり、無細胞化した事で移植免疫の問題から解放される事、乾燥する事で保存性と利便性は格段に向上する事などが挙げられる。イヌ、ならびにウサギにおけるこれら無細胞気管の植埋によって、急性期呼吸器感染症を合併した場合には、約10日間で死亡する例も認められたが、呼吸器感染から脱却できた症例においては、平均30日間程度の生存が認められ、長期生存例では3ヶ月を越えていた。これら植埋動物の死亡例は植埋気管の不良肉芽の増殖による狭窄が原因であった。この狭窄の原因は現状では不明であるが、無細胞化が不十分な事による急性期免疫拒絶の可能性が考えられた。 植埋組織生着例においては、極めて早期に組織侵入が観察されると共に、異物排泄機構として重要な気管上皮細胞の吻合部からの伸展と増殖が認められ、その親和性の高さが確認された。次年度以降、急性期拒絶の可能性を考え、短期的免疫抑制剤の使用を考慮に入れた研究展開を企画立案している。
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