頭頚部または呼吸器悪性腫瘍の廓清術では、時に失声を伴う程の広範な気管切除を要求され、著しく患者のQOLを低下させる。本研究では、この失声を回避する為の代替気管の可能性を研究した。代替気管としては従来から、金属、合成高分子、ガラスファイバー等が知られているが、異物反応性が高く実用に堪えなかった。今回筆者らは、全く新しいコンセプトで生体素材から気管を作成する事を試み、同時にその作成した気管に気管構成細胞を導入する事を試みた。その結果、摘出気管をある種の緩和な条件で無細胞化する事で、組織を傷める事無く組織の再利用が出来る様になった。今回の考案による無細胞化細胞導入気管は、気管植埋後の狭窄を予防出来る可能性があり、その有用性が示唆された。現在、本法によって作成した再生気管の植埋後の経過観察期間中であるが、良好な結果を得るに至っている。これら知見と新たにこの本研究遂行過程2年間で開発出来た技術と発見は、呼吸器悪性腫瘍の外科的治療に全く新しい技術革新を生み出す可能性があるが、本研究結果は今後の再生医療技術に関わる重要知見であり、特許申請を視野に入れた研究展開が必要と考えられ、その公表を差し控えたい。
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