研究概要 |
[背景]急性炎症早期では循環血中の好中球増加、つまり骨髄内から循環血液中へのmatureおよびimmatureな好中球の遊走(bone marrow release)が生じている.その後増加した好中球は変形能を低下させ、肺傷害のkey stepである好中球肺集積を引き起こすが、そのメカニズムについて好中球細胞骨格変化を中心に検討を行った.我々は昨年度までの研究によりラット髄内好中球と循環好中球の肺集積にはF-actinが重要であることを明らかとした.一方で作用機序としての抗凝固作用以外に抗炎症作用を有し重症敗血症にも有効であるantithrombin(AT)をラットに投与したところ好中球肺集積を抑制する結果を得た.本年度はさらに好中球に対するATのメカニズムについて細胞骨格変化を中心にin vitroで検索した.[方法]分離ヒト好中球はα,βもしくはlatent-ATにより前処置後fMLPで刺激、2分後にfilter assayで変形能を評価し、FACS scanでF-actinを定量した.[結果]好中球stiffnessはfMLP投与により50%上昇した.しかしα,β,latent-AT前処置群ではfMLP刺激でも有意な抑制を示した.一方heparinase前処置でATによる好中球stiffness低下作用は抑制されなかった。またF-actin定量値も好中球stiffnessと有意に相関した.[結論]急性肺傷害に先立つ好中球肺集積のinitial stepとなる好中球変形能低下にF-actinは重要な役割を担っていると考えられた.またATのactin polymerization抑制による好中球変形能低下抑制作用にはheparin sulfate proteoglycan非依存性情報伝達経路の関与が示唆された.
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