研究概要 |
本年度、我々は敗血症ラットの横隔膜機能に対するペントキシフィリンの効果につき、in vitroにて検討した。 1,目的:敗血症時の呼吸不全の一因として横隔膜収縮力低下が知られている。我々はこれまでにペントキシフィリン(PTX)が敗血症時の横隔膜収縮力低下を改善し、これにTNF産生抑制が関与していることを報告した。PTXはphospodiesterase阻害作用によりマクロファージ細胞内cAMP濃度を上昇させTNF産生抑制を来す。同様に、横隔膜筋細胞内cAMP濃度を上昇させることで収縮力低下を改善させる可能性がある。今回、我々はPTXによる横隔膜収縮力低下改善作用に、横隔膜組織内cAMP濃度上昇が関与しているかを検討すると共に、同組織内の脂質過酸化指標としてマロンジアルデヒド(MDA)濃度を測定した。 2,方法:Winster系ラットを以下の3群に分けて検討した。E群;エンドトキシン(ET)(20mg/kg)を腹腔内に投与し敗血症を作成。E+PTX群;PTX(100mg/kg)をET投与30分前に腹腔内に投与。C群;生食を腹腔内に投与。ET投与4時間後に左横隔膜標本を摘出し組織ホモゲネートを用いEIA法によりcAMP濃度を、N-methyl-2-phenylindoleを用いた比色法によりMDA濃度を測定した。 3,結果:(1)横隔膜組織内cAMP濃度は3群間で有意差を認めなかった。(2)ET投与により横隔膜組織内MDA濃度は有意に上昇したが(P<0.01)、その上昇はPTX投与により有意に抑制された(P<0.01)。 4,結論:PTXは横隔膜組織内cAMP濃度変化を来すことなく横隔膜収縮力低下改善作用を示した。横隔膜組織内MDA濃度の結果から敗血症の進展の抑制が横隔膜への酸化ストレスを防いだものと考えられた。
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