研究概要 |
敗血症性多臓器障害の病態は過剰な炎症反応により特徴づけられる。肝は敗血症の標的臓器であり、その障害は敗血症の予後に大きな影響を及ぼす。Recombinant human interleukin-11 (rhIL-11)は、血球産生を刺激するサイトカインとして発見されたが、近年、抗炎症作用を有することが報告された。本研究ではエンドトキシン投与急性肝不全モデルに対するrhIL-11の効果を検討した。雄性Sprague-Dawleyラットにエンドトキシン(lipopolysaccharide : LPS; 20mg/kg)を腹腔内投与し、急性肝不全モデルを作成した。LPS投与直後にrhIL-11(150μg/kg)あるいはその溶解液を投与し、肝障害を血清ALT,AST値、HE染色による組織傷害にて、炎症を肝Tumor Necrosis Factor (TNF)-α, inducible Nitric Oxide Synthase (iNOS) mRNAの発現と転写因子Nuclear Factor (NF)-κBのDNA結合活性にて評価した。また、rhIL-11投与がLPS投与ラットの生存率に及ぼす影響を検討した。その結果、LPS処置により、血清ALT,AST値の上昇、肝の広範壊死、TNF-α, iNOS mRNAの著明な誘導および炎症の転写因子:NF-κBの著しい活性化が認められた。一方、rhIL-11投与はこれらの指標を全て軽減し、肝障害の改善をもたらした。また、rhIL-11投与はLPS投与ラットの生存率を有意に改善した。以上より、rhIL-11は抗炎症作用を介して、エンドトキシン投与急性肝不全に対して治療効果、生存率の改善をもたらすと考えられた。本研究の結果は、敗血症性急性肝不全に対する有効な治療薬の開発につながる画期的結果である。
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