研究概要 |
エンドトキシン誘発麻痺性イレウス実験モデルを用い、麻痺性イレウス発現の生体内情報伝達機構における、内因性カンナビノイドの関与について検討した。 意識下・無拘束モルモットへの、アナンダミド(AEA)、2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)腹腔内投与は、直ちに一過性の腸管張力低下を起こさせた。この反応は、エンドトキシン(lipopolysaccharide, LPS)投与2〜3時間後における反応と非常に類似し、LPSがカンナビノイド受容体を介する可能性を示した。 AEA,2-AGあるいはLPSによる意識下・無拘束モルモットの腸管張力低下作用は、カンナビノイドCB1受容体アンタゴニストの前処置により、いずれも有意に阻害されたが、CB2受容体アンタゴニストにより影響を受けなかった。 カンナビノイド(AEA,2-AG)およびLPSの腸管に対する直接作用を検討するために、モルモットの摘出腸管を用いた実験を行った。オーガンバス中に懸垂した摘出腸管にAEA,2-AGあるいはLPSを投与しても、腸管張力に変化は認められなかった。この結果から、AEA,2-AGあるいはLPSによる腸管弛緩の作用点は、腸管平滑筋上にはないことが示唆された。 以上、エンドトキシン誘発麻痺性イレウス発現の生体内情報伝達機構に、内因性カンナビノイドが関与し、カンナビノイド受容体を介した病態発現であることが示唆された。しかしながら、カンナビノイドが直接腸管平滑筋に作用して弛緩を起こさせたわけではなく、神経系を介した作用である可能性が考えられた。
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