色覚異常は浸透率の非常に高い遺伝子疾患であり、男性の約5%に見られ、女性の保因者は約10%という極めて高率にのぼる。色覚異常に関する遺伝情報を知る自由と機会は社会医療システムの中で提供されるべきである。 色覚異常はX染色体の長腕Xq28に存在するオプシン遺伝子の異常により引き起こされる。正常者は赤色オプシンと緑色オプシンの両方を保有しているが、片方が欠如した場合には色覚異常を呈する。オプシン遺伝子はゲノム上で赤色、緑色遺伝子が近接して並んでいるが、非翻訳領域の配列の違いを利用してそれぞれの遺伝子の第5エクソンが赤型か緑型かをDNAシークエンシング法により調べることで保因者の診断が可能である。申請者の知己や学内のボランティア等から総数30程度の検体を解析し、本法による保因者の浸透率を検討した。粘膜細胞採取用のブラシを用い、被験者の頬粘膜を擦過し細胞を採取した。通法に従い、genomic DNAを抽出した。次にこのDNAを鋳型にしてPCRを行った。増幅された遺伝子断片のSSCP解析およびシークエンス解析を行い、保因者の判定を行う。オプシンは5つのエクソンを持つが、5'側PCRプライマーをエクソン5内に、3'側PCRプライマーを非翻訳領域の特異配列部分に設定した。これにより正常であれば赤色遺伝子、緑色遺伝子の順序で並んでいるはずの配列の異常が検出可能であり、色覚異常の保因者を判定することができる。しかし、保因者の20%程度はこの検出法で異常はみいだせず、エキソン上の点突然変異、あるいはプロモーター領域の変異などの可能性が示唆されるが詳細は不明である。現在、これらの検体について、保因の有無等について検討中である。
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