色覚異常は浸透率の非常に高い遺伝子疾患であり、男性の約5%に見られる。伴性劣性遺伝形式をとるため女性の患者は約0.2%だが、症状の現れない保因者は10%程度にのぼるとされる。女性の保因の有無は遺伝学的に判断できない場合、遺伝子検査以外には方法がなく、妊娠前の女性にとっては遺伝子検査の潜在的なニーズは高い。本研究の目的は、口腔粘膜擦過法によって得られたDNA試料から、色覚異常造伝子保因者をスクリーニングする遺伝子検査法を確立することである。オプシンは5つのエクソンを持つが、5'側PCRプライマーをエクソン5内に、3'側PCRプライマーを非翻訳領域の特異配列部分に設定した。これより正常であれば赤色遺伝子、緑色遺伝子の順序で並んでいるはずの配列の異常が検出可能であり、色覚異常の保因者を判定することが可能であるとされる。本研究では申請者の知己等のボランティア等から総数30程度の検体を解析した。粘膜細胞採取用のブラシを用い、被験者の頬粘膜を擦過し細胞を採取した。まず、口腔粘膜擦過法によって得られた検体からDNAを抽出する方法を確立し、このDNAを鋳型にしてPCRを行った。抽出されたDNAからはいずれもベータアクチンのPCR増幅が得られ、本法で検査の目的に使用できるDNAが得られることが確認された。オプシン遺伝子を増幅するためのプライマーを設計し、保因者の判定を試みた。複数のプライマーを使用し、増幅産物を得た。これらの増幅産物のシークエンス解析を行ったが、いずれも非特異的増幅産物であり、診断用のプライマー配列の設計について、さらなる検討が必要と考えられた。しかしながら、口腔粘膜擦過法によって得られたDNAサンプルからは、その他複数の遺伝子の増幅が成功し、本法が遺伝子診断のための非浸襲的な検体採取法として有効であることが示された。
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