研究課題/領域番号 |
15591930
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
豊澤 悟 大阪大学, 歯学研究科, 講師 (30243249)
|
研究分担者 |
中野 貴由 大阪大学, 工学研究科, 助教授 (30243182)
小守 壽文 大阪大学, 医学研究科, 助手 (00252677)
|
キーワード | dentin matrix protein 1 / 発現制御 / 石灰化 / 歯 / 骨 / 骨細胞 / トランスジェニックマウス |
研究概要 |
Dentin matrix protein 1(DMP1)は、組織中で強く負に荷電し、石灰化と密接に関連している酸性ホスホ蛋白質の1つである。最近、我々はDMP1が骨組織中の骨細胞や前骨細胞により特異的に産生されるが、骨芽細胞ではその産生は見られない事を明らかにした。骨細胞は骨の至る所に存在しているが、真の機能は明らかではなく、骨細胞に特異的に産生されるDMP1機能の解明が骨細胞の機能解明につながると考えられる。そこで、我々はtypeIコラーゲン・プロモーターを用いてトランスジェニックマウスを作製し、マウスの骨全体にDMP1を蓄積させて、骨組織におけるDMP1の影響を検討した。その結果、DMP1は骨の石灰化速度を促進する機能を有する事が明らかとなった。以上の結果から、骨細胞はDMP1を周囲に産生することにより、骨の石灰化をコントロールしている事が示唆された。 ところが、骨折の治癒過程におけるDMP1蛋白の分布を検討したところ、正常とは異なり、膜性骨化部や内軟骨性骨化部の新生骨全体や軟骨基質にもDMP1が蓄積しており、このような病的状態では骨芽細胞や軟骨細胞もDMP1を産生している事が示唆された。しかし、骨折の治癒過程におけるDMP1mRNAの発現分布を検討したところ、DMP1遺伝子発現はやはり骨芽細胞には認められず、新生骨全体に認められたDMP1蛋白は多数の骨細胞が急速に骨に取り込まれ、また高率にDMP1蛋白を発現するため、一時的に新生骨全体に蓄積すると考えられた。 さらに、軟骨基質に認められたDMP1蛋白の分布に一致してDMP1遺伝子発現が確認されたが、このDMP1遺伝子発現細胞は骨細胞系のマーカーあるtypeIコラーゲン遺伝子発現細胞であることが判明した。このことから、軟骨基質に認められたDMP1発現細胞は、血管侵入に伴って軟骨基質内で分化した骨芽細胞系の細胞であり、軟骨細胞はDMP1を賛成しないと考えられた。以上の結果から、DMP1はオステオポンチンなどの他の細胞外基質とは異なり、その発現が非常に安定して制御されていることが分かった。現在、DMP1遺伝子プロモーターをクローニングし、DMP1遺伝子の発現制御機構を解析中である。
|