研究分担者 |
工藤 保誠 広島大学, 医学部・医歯薬学総合研究科, 助手 (50314753)
宮内 睦美 広島大学, 医学部・医歯薬学総合研究科, 助教授 (50169265)
高田 隆 広島大学, 医学部・医歯薬学総合研究科, 教授 (10154783)
佐藤 淳 広島大学, 医学部・医歯薬学総合研究科, 助手 (70335660)
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研究概要 |
唾液腺腫瘍の病理診断や治療法の選択に役立つデータの蓄積を目的とし、遺伝子ならびにタンパク発現の変化の検討を、本年度は主に臨床材料を用いて行い、以下の知見を得た。 1.正常唾液腺組織を対象に、細胞接着分子E-cadherin,β-catenin, CD44v9)、増殖因子受容体(EGFR)、血管新生因子(VEGF)および細胞周期制御因子(p27,p21)の発現を調べた結果、細胞接着分子は細胞膜上に、p27,p21は核内に強く発現されていることが確認された。一方、唾液腺実質細胞によるEGFR、VEGFの発現は明らかではなかった。 2.良性腫瘍の代表として多形性腺腫、Warthin腫瘍を、悪性腫瘍の代表として腺様嚢胞癌、粘表皮癌を対象として上記1と同様の検討を行った。良性腫瘍では多形性腺腫における接着分子発現の減弱が見られた以外は、正常唾液腺と同様の所見を呈したが、悪性腫瘍では、高率にp27の発現低下が見られ、さらに腺様嚢胞癌では、E-cadherin,β-cateninの発現が減弱し、少数の症例ではあるが、β-cateninの核内蓄積が認められたことから、Wint signal系の活性上昇の生じている可能性が示唆された。 3.多形性腺腫内癌腫の症例を用い、良性腫瘍部分と癌腫部分との遺伝子発現の違いをp53遺伝子を対象に、microdissectionにより調べた結果、癌腫部分ではexon 8に点突然変異が生じている可能性が示唆された。 4.悪性筋上皮腫から、さらに悪性度の高い未分化癌が生じた脱分化型悪性筋上皮腫では、p53遺伝子の異常とcyclin D1の過剰発現が生じていることが明らかとなった。 4.多形性腺腫と腺房細胞癌にhTERT遺伝子を導入することにより、不死化細胞株を樹立することができた。多形性腺腫細胞株では、PLAG1遺伝子発現が観察され、多形性腺腫に特徴的な形質発現を検討するのに適することが明らかとなった。
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