研究概要 |
唾液腺腫瘍の病理診断や予後推測、治療法の選択等、臨床の場で応用できる基礎的データの蓄積を目的に、臨床材料、培養細胞を用い、タンパクならびに遺伝子発現の変化を調べ、以下の知見を得た。 1.唾液腺腫瘍の悪性度の亢進、浸潤・転移には、E-カドヘリン,β-カテニン,CD44v9などの細胞接着分子の発現低下やp53,p27,cyclin D1,Aurora A/Bなどの細胞周期制御因子の異常、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)の過剰発現が関わり、特に腺様嚢胞癌では、転移の推測に役立つp27の発現低下がSkp2の過剰発現によるp27のユビキチン分解促進によって生じていることを明らかにした。p53の遺伝子異常については、詳細に検討しており、低悪性多形性腺腫の存在の提唱に役立てる予定である。 2.一方、口腔扁平上皮癌において発生に関わるSAKI、浸潤・転移を促進するperiostinの唾液腺腫瘍への関与は少ないことを示唆する結果が得られた。 3.鑑別診断上問題となる腫瘍細胞の化生では、オンコサイト化生を伴っていても、腺上皮性あるいは筋上皮性分化のマーカー発現を調べることにより、腫瘍細胞本来の分化を明らかにすることが可能で、診断上有用であることが明らかとなった。 4.多形性腺腫の培養細胞にhTERTのみを遺伝子導入することにより、多形性腺腫の分化の特性(腺上皮、筋上皮の両方向)を有する不死化細胞を樹立することができ、特異な形質発現についての検討のを行う準備が整った。
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