研究概要 |
蛋白質脱リン酸化酵素阻害剤オカダ酸はヒトおよびマウスの骨芽細胞にアポトーシスを誘導した。核小体にドット状に局在するニュークレオリンは蛋白質脱リン酸化酵素1δ型と結合する。正常細胞においてドット状に局在するニュークレオリンはアポトーシス細胞では分解されて核全体に拡散し,最終的には核から消滅した。ニュークレオリンは核と細胞質間のシャペル蛋白であり,細胞の生存や癌化に関連するリン酸化蛋白である。この蛋白のアポトーシスにおける動向を蛋白レベルで調べるために,正常細胞およびアポトーシス細胞から調製したタンパク質をSDS-PAGEで分離し,抗-ニュークレオリン抗体を用いてウエスタンブロット法で分析した。正常細胞では110kDaのニュークレオリンが検出されるが,アポトーシス細胞から調製したタンパク質では110kDaのタンパク量が減少し,新たに80kDaのタンパクが出現しその量が増加した。つまり,アポトーシスによりニュークレオリンは分解されて80kDaの断片になる。同様の結果はインビトロアポトーシス系においても認められた。蛋白質脱リン酸化酵素1δに特異的な塩基配列を有する2重鎖RNAを合成して,RNAiを行うと他のPP1(PP1α,PP1γ-1)の発現は抑制を受けなかったが,PP1δの発現は著しく抑制された。また,PP1δのRNAiにより,ニュークレオリンの発現も減少した。以上の結果は,ニュークレオリンとアポトーシスには密接な関係にあり,その関係をPP1δが調節することを示唆している。
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