研究概要 |
本研究は、同一歯に由来する歯根膜線維芽細胞と歯肉線維芽細胞の培養形系を用いて、トロポエラスチン(tropelastin)、微細線維(fibrillin-1,fibrillin-2,MAGP-1,MAGP-2),エラスチン結合タンパク(fibulin-5)の発現とその遺伝子発現、エラスチン沈着量を経時的に分子生物学的、免疫細胞組織化学的に解析することを目的としている。 弾性系線維形成においては,トロポエラスチンの微細線維への沈着機構が必要とされている。微細線維構成成分であるフィブリリン-1,-2とトロポエラスチンの発現とそれらの遺伝子発現は歯肉線維芽細胞では認められた。また,歯肉ではエラスチン沈着したエラウニン線維と弾性線維が観察された。しかし,歯根膜線維芽細胞では,フィブリリン-1,-2の発現とそれらの遺伝子発現も低く,トロポエラシチン発現は認めらなかった。さらに,歯根膜組織では,エラスチン非沈着線維であるオキシタラン線維のみが観察された。 次に,エラスチン結合グリコタンパクであるフィブリン-5(微細線維構成成分ではない)の発現とその遺伝子発現を解析した。歯肉線維芽細胞では,フィブリン-5とトロポエラスチンの遺伝子発現は経時的に上昇する同様な発現パターンを示した。さらに,歯肉線維芽細胞では,siRNAを用いてトロポエラスチン発現を抑制すると,フィブリン-5の発現も抑制された。フィブリン-5遺伝子発現はトロポエラスチン遺伝子発現で調節されていることが示唆された。しかし,歯根膜線維芽細胞では,フィブリン-5の弱い発現は認められたが,発現パターンの変化は認められなかった。 これらの結果より,歯周組織の部位による弾性系線維形成機構の差異が明らかとなってきた。そこで,これらの形成機構を基礎とした歯周組織の修復および再生・新生への応用を検討している。
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