研究課題
基盤研究(C)
身体の諸組織には組織固有の形態と機能を持つ細胞を生み出す能力を持つ幹細胞の存在が想定される。それ故、組織再生の研究には幹細胞を同定することが不可欠である。しかし、歯周組織、とくに接合上皮、歯肉溝上皮および口腔歯肉上皮を含む歯肉上皮の組織幹細胞はまだ同定されていない。そこで以下のin vivoおよびin vitroの方法で幹細胞の同定を試みた。1.歯周炎患者で治療上歯周外科的に採取した歯肉組織を組織学的に検討し、上記の三領域を保持し炎症性細胞浸潤の軽微な組織部位を正常歯肉上皮とみなし、同組織の接着分子の存在と増殖活性(BrdU取り込み法)、さらに幹細胞の候補分子の局在を免疫組織学的に検討した。その結果、BrdUは接合上皮には全く取り込まれず、接合上皮に隣接する歯肉溝上皮および口腔歯肉上皮の基底細胞と傍基底細胞の一部の細胞に取り込まれた。口腔上皮の幹細胞マーカーの候補分子と考えたp75NGFR(低親和性神経成長因子レセプター)はすべての基底細胞に陽性を示した。この他、基底細胞に陽性を示した分子としてk19,desmoglein 3,integrin β1があったが、いずれも、ほぼすべての基底細胞が陽性を示したので、マーカー分子と見なすにはさらに検討する必要がある。2.我々が樹立した不死化歯肉上皮細胞(GE1)を用いて、歯肉溝上皮由来のGE1細胞の形態に及ぼすレチノイン酸の作用を検討した。レチノイン酸はGE1細胞のデスモゾーム構成分子のデスモグレインやケラチン13、14の発現を有意に抑制することによりデスモゾームを消失させGE1細胞の重層化を抑制することがわかった。同時に、ヘミデスモゾームも完全に消失したが,integrin α6やintegrin β4の発現減少はみられなかった。今後は基底細胞だけを分離してレチノイン酸の作用を検討することにより、基底層に存在する幹細胞への作用を解明することができると考える。
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