研究概要 |
本研究では、ラット・マウスの舌乳頭・味蕾形成における成長因子を含めたシグナル分子の役割が解析された。成長因子・シグナル分子の局在を明らかにするために、蛍光抗体法によるレーザー顕微鏡観察を採用し、舌上皮分化の指標としては、ケラチンサブユニットの局在も同様の方法で明らかにした。In vivoでの舌乳頭・味蕾形成に対する成長因子・シグナル分子の作用を明らかにするために、C0_2インキュべーターを用いたラット・マウス胎児舌の器官培養の予備的実験も行った。 1.ラット・マウスの胎児および幼若動物(胎齢13,15,17,19日、生後0,7,14,21日)の舌を、母動物および幼弱動物の麻酔下で4%paraformaldehyde灌流固定後採取し、同液で再固定し、エポキシ樹脂で包埋した。舌乳頭および味蕾の形成とを関連付けて、K13,K14,K18,Egf, EgfR, Kgf(Fgf-7), Fgf-4,-5,FgfR-2,-3,Shh, Bmp-3,-4,-5,-6,-7,Tgfβ1,TgfβR and Bdnfに対する抗体を用い、Alexa Fluor 488,546 or 633(Molecular Probes)で蛍光標識し、共焦点レーザースキャン顕微鏡で観察した。また、同時期の舌試料上で、いくつかの抗体についてはProtein A-colloidal gold法免疫電子顕微鏡観察を継続している。 2.1と同時期のラット・マウス胎児および幼若動物の舌粘膜で、K13,K14,K18,Egf, EgfR, Kgf(Fgf-7), Fgf-4,-5,FgfR-2,-3,Shh, Bmp-3,-4,-5,-6,-7,Tgfβ1,TgfβR and Bdnfの分子種のm-RNAに対するプローブでのin situ hybridization法を試み、各シグナル分子のm-RNAの出現時期と分布の解析し、舌乳頭と味蕾の形成との関連性を検討するための予備的観察も継続している。また、同じ時期の試料でのProtein A-colloidal gold法を用いた免疫電子顕微鏡観察については、現在観察の準備を進めている段階である。 3.舌乳頭と味蕾の形成における、in vivoでのシグナル分子の作用を明らかにするためのラット・マウスの胎児舌の器官培養実験に関しても、平成15年度の本補助金によって購入した炭酸ガス培養装置によって、現在予備的な実験を行っている段階である。 4.蛍光抗体法によるレーザー顕微鏡観察データと舌乳頭と味蕾の形成過程との関連性については、現在解析を進めている段階であるが、一部のデータについては既に国際的な科学雑誌に掲載済み、あるいは印刷中ないしは投稿中である。
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