目的:幅や高さの低い顎骨を増大することを目的とした骨再生療法として骨移植がインプラント治療と併用して用いられるようになってきた。これらの移植材にPRP(多血小板血漿)を混和することは速やかな血管新生や骨組織再生を促進する効果があると考えられている。 研究方法:本実験では骨形成と血管新生について血管鋳型法を用いて観察した。手術直前に採血を行いPRPを作製し、TCP系人工骨と混和した。実験はビーグル犬の小臼歯を抜歯し以下の4実験群に分けた。抜歯・人工骨移植後、30日後に血管注入を行った。 研究成果:PRPなし+抜歯群、海綿骨は骨梁が少なく、骨髄血管網の配列も粗である。拡大像でも太い再生骨梁がみられるが、周囲血管のネットワークは粗く数も少ない。このことは通常の抜歯では、海綿骨内の骨梁の成熟と血管再生は30日では終了していない。 PRP+抜歯群、海綿骨内部には骨髄血管網の形成がみられる。拡大像では再生骨梁間に密な骨髄血管網の配列が観察される。これらの所見からPRP未使用群と比較して抜歯群では、PRPは血管新生とリモデリングに対して働く可能性が示唆される。 PRPなし+TCP群、緻密骨内には顆粒が残存している。海綿骨内では顆粒が核となり骨梁内に骨髄血管も観察される。拡大像でも同様所見であるが、吸収中の顆粒が骨髄内に観察される。このことはTCP系人工骨移植は骨再生に有効な方法であることがわかる。しかし顆粒の吸収速度(径や材質)などに充分留意する必要があると考えられる。 PRP+TCP群日後、海綿骨内の骨梁と骨髄血管の再生はPRP未使用群よりも進行している。拡大像では顆粒は分解しはじめている。これらの結果からPRPは血管の新生、リモデリング、さらにはTCP顆粒の吸収が促進することが示唆された。
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