研究概要 |
1.種々のP.gingivalis菌株における主要外膜蛋白質の発現 主要外膜蛋白質のうち、RagAおよびPgm6/7は同様の分子量のものがいずれの菌株にも存在した。ところが、RagBは菌株によって移動度が異なるだけでなく、特異抗体の反応性も著しく異なっていた。 2.P.gingivalisの主要外膜蛋白質の発現に及ぼす環境因子の影響の検討 種々の環境因子が主要外膜蛋白質の発現に及ぼす影響を通常のバッチ培養によって調べたところ、温度が最も影響を与える因子であった。温度を上昇させると、主要外膜蛋白質のうち、RagA, RagBおよびジンジパインの発現が低下し、ほかに線毛や短線毛も発現が低下した。次に、培養環境の制御が可能な連続培養法を用いて、環境因子の影響を検討した。増殖速度が速くなると、線毛および短線毛の発現が著明に増加したが、ジンジパインの産生量と活性は低下した.栄養の乏しい条件では、線毛および短線毛の発現が減少した。気相を嫌気条件から通気条件へ変化させると、ジンジパインの活性が著明に低下した。酸素ストレスにより著明に増量する蛋白質スポットを二次元電気泳動法にて確認後、同定した。 3.欠失変異株を用いたP.gingivalisの主要外膜蛋白質の性質の解析 大腸菌のOmpAと相同性をもつP.gingivalisの主要外膜蛋白質Pgm6/7は、ヘテロ3量体を形成して外膜に存在していた。欠失変異株では親株と比較して多数のvesicle様構造物が菌体外に観察された。Pgm6/7が外膜の安定性および構造維持に重要な役割を果たしていることが示唆された。また、主要外膜蛋白質RagAおよびRagBの欠失変異株の作製も終了したので、現在、変異株の性質の検討を進めている。 4.歯周病患者血清とP.gingivalisの主要外膜蛋白質との反応性 本学の臨床講座と協力して採取した歯周病患者の血清を用いて、P.gingivalisの主要外膜蛋白質に対する抗体産生の状態をウェスタンブロットによって調べた。根尖性歯周炎に罹患した患者の血清は、P.gingivalisに対する免疫反応を高い頻度で示し、なかでも主要外膜蛋白質であるRagBやジンジパインとの強い免疫反応を示した。臨床所見のうち、打診痛や根尖部透過像の有無が、P.gingivalisに対する免疫反応と相関していた。
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