研究概要 |
顔面口腔領域からの味覚、痛覚、触覚らの種々の感覚神経の興奮で自律神経反射が起こるが、これらの反射弓、特に中枢機序は不明な点が多い。触、圧、痛覚刺激は三叉神経を介して自律神経反射を起こす。この時三叉神経の感覚信号は三叉神経脊髄路核に投射し、そこでニューロンを代えて自律神経(交感神経、副交感神経)節前ニューロンに達すると考えられる。 今研究では三叉神経脊髄路核は吻側亜核、中間亜核、尾側亜核の三部位に分類されているが、自律神経反射を起こすのはどの部位を経由してくるのかを検討した。自律神経反応には副交感神経に由来する唾液分泌、顔面血管拡張反応と交感神経に由来する体幹血圧変動があることから、三叉神経脊髄路核吻側亜核、中間亜核、尾側亜核の三部位の電気刺激をしたときの顔面血管拡張反応と体幹血圧変動を測定することにより、どの亜核が最も自律神経反射に関与しているかを検討した。 実験動物として今回はラットを用いた。ウレタン麻酔後、筋弛緩薬投与下人工呼吸を行い、頭蓋骨の一部を剥離除去して三叉神経脊髄路核露出した。閂(オベックス)から吻側4mm、1-2mm,-2mmをそれぞれ吻側亜核、中間亜核、尾側亜核部位として電気刺激を行い、その時の左右下顎口唇血管拡張反応と体幹血圧変動を観察した。その結果1)刺激側と同側の血管拡張反応は中間亜核が統計学的に有意差をもって他の吻側亜核、尾側亜核よりも大きい反応であったが、対側では三部位共に同側より有意に小さい反応であり、三部位間では差がなかった、2)体幹血圧反応は三部位の電気刺激で全て上昇したが中間亜核と尾側亜核部位では吻側亜核に比べ有意な差をもって上昇した。中間亜核と尾側亜核部位間では有意の差はなかった。 以上の結果から三叉神経脊髄路核のうち、中間亜核は副交感性血管拡張反応に、尾側亜核は体幹血圧上昇反応により強く関与することが示唆された。
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