マウス胸腺由来cDNAからクローニングした3種類のRANKLアイソフォームで、既知のRANKLと同じ構造を有するRANKL1、細胞質内領域の一部を欠く構造を有するRANKL2、細胞質内領域および膜貫通領域を欠く構造を有するRANKL3それぞれを発現ベクターに組み込み、NIH3T3細胞にトランスフェクションして安定形質発現細胞を作成した。さらに、複数のRANKLアイソフォームの組み合わせをトランスフェクションした安定形質発現細胞も作成した。これらの細胞を用いてマウス骨髄由来マクロファージと共存培養させ、酒石酸抵抗性酸フォスファターゼ陽性単核細胞(前破骨細胞)および、酒石酸抵抗性酸フォスファターゼ陽性多核細胞(破骨細胞骨)の形成を調べた。さらに、クジラの象牙質切片上で共存培養することにより骨吸収能を検討した。 その結果、RANKL1およびRANKL2は単核および多核の酒石酸抵抗性酸フォスファターゼ陽性細胞を形成するが、RANKL3にはその能力がないことがわかった。また、RANKL1やRANKL2にRANKL3を共発現させると酒石酸抵抗性酸フォスファターゼ陽性細胞の多核化が阻害されること、すなわちRANKL3はRANKL1やRANKL2とともに発現させると破骨細胞の多核化の過程を阻害する作用があることを発見した。クジラの象牙質切片上でもRANKL3が共発現したものではRANKL1やRANKL2単独発現のものよりも吸収窩の形成が有意に減少しており、機能的にもRANKL3による骨吸収の阻害作用が確かめられた。また、同様の実験を3種類のヒトRANKLアイソフォームで行なったところ、マウスの場合と同様RANKL3の共発現による破骨細胞の多核化および骨吸収の阻害作用が確かめられた。以上の結果から、3種類のRANKLアイソフォームの発現量により骨代謝が調節されていることが強く示唆された。
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