研究課題
本研究では、3種類のRANKLアイソフォームがその組み合わせにより破骨細胞系性能を調節し得ることを、培養細胞を用いて実験的に明らかにしてきた。16年度は、作製したポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を利用して独自にサンドイッチELISA法を開発し、骨粗鬆症外来を受診した閉経後女性患者50名の血清を用いて血中遊離型RANKL濃度を測定し、その結果を解析した。すでに発表されている海外の論文データからも予想されたが、血中RANKL濃度は個人によるばらつきが大きかった。しかし、相関係数は低いものの、血中RANKL濃度と患者の年齢、およびすでに臨床で骨吸収のマーカーとして使われている、患者の尿中デオキシピリジノリン濃度との間には正の相関が認められた。また、治療として活性型ビタミンD3とカルシウム製剤を投与された患者の血中RANKL濃度は、未治療患者の血中RANKL濃度より低い傾向が認められた。以上の結果から、絶対値としてはばらつきが大きいものの、血中RANKL濃度が骨代謝を反映している可能性が考えられた。また、RANKLはT細胞でも発現していると報告されていることから、免疫系にも何らかの機能を果たしていることが示唆されている。東京医科歯科大学大学院分子免疫学分野(東教授)と共同研究を行い、ヒト末梢T細胞でのRANKLの発現を検証した。その結果、ヒト末梢T細胞でのRANKLの発現はきわめて少ないこと、活性化したT細胞、炎症性疾患の患部より採取したT細胞では発現量が増加していることがわかった。さらに、我々が所有する胸腺上皮由来細胞株TECでのRANKLの発現をRT-PCR法で確かめたところ、比較的強いRANKLの発現が認められた、この結果から、RANKLが破骨細胞系性能と独立してT細胞に対して何らかの機能を果たしている可能性が考えられた。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (2件)
Immunol.Lett. 94
ページ: 239-246
内分泌・糖尿病科 19(3)
ページ: 263-267