研究概要 |
ヒスタミンH3受容体は中枢ヒスタミン神経機能を制御する受容体で,その機能変化は摂食行動などの生理機能に大きな影響を及ぼすと考えられている。ラットにおいてはこれまでに,3種のヒスタミンH3受容体isoform(H3L, H3S, H3(397))が報告されており,また,これらisoform間でヒスタミンの親和性に差異が認められていることから,その発現様式および発現変化の検討はヒスタミン神経系の機能を考える上で重要な問題であると思われる。今年度の検討では,摂食行動に関連の深い視床下部におけるヒスタミンH3受容体isoformのmRNA発現と,実際の摂食によるH3受容体mRNA量の変化を検討した。 検討は,次に記す方法に従い行った。H3受容体isoformのmRNA発現は,ラット視床下部より抽出した全RNAをDNase処理し,RT-PCR法により増幅,アガロースゲルで泳動分離後,デンシトメーターにて各isoform相当バンドを計測することにより行った。摂食によるH3受容体mRNAの発現変化は,24時間絶食したラットに給餌し,6時間後のラット視床下部より抽出したRNAを用いてリアルタイムPCRにて検討した。 以上の検討の結果,視床下部におけるH3受容体mRNA発現には,H3L受容体mRNA発現に雌雄差が,またH3S, H3(397)に系統差が認められ,摂食量の少ない方がmRNA発現が多いという傾向が示された。一方,視床下部におけるH3受容体mRNA量は絶食により減少したが,再摂食により増加し,コントロールレベルにまで回復した。実際の摂食変化によりH3受容体mRNA発現量も変化することが示されたことより,本検討の結果は,H3受容体発現量の差異が,摂食行動に影響するヒスタミン神経系の機能調節に関与している可能性を示唆するものであると考える。
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