研究概要 |
実験動物にはSD系の雄性ラット(7-21日令程度)を用いた。通法に従い最後野を含む新鮮脳延髄前額断スライス標本(厚さ150-300μm)を作製した。近赤外光を用いたノマルスキー微分干渉顕微鏡下にて上記の脳スライス標本中に同定した神経細胞からホールセル記録またはアンフォテリシンBを用いた穿孔パッチ記録を行った。ニューロバイオチン注入により記録したニューロンを標識し,細胞形態を観察し,顕微鏡用デジタルカメラにて撮影した。これらの実験から下記のような結果が得られた。 1.最後野ニューロンの過分極作動性カチオンチャネル(H電流)の特徴 最後野の約60%のニューロンからH電流が検出され,その時間依存性の活性化過程は均一であり,異なるニューロン間のH電流において電気生理学的特性の違いは認められず,同部における一定のチャネルタイプの発現が予測された。最後野のH電流は特異的阻害剤であるZD7288投与により著明に抑制され,緩徐脱分極の大きさと速度の減少がおこり放電頻度の減少につながることが分かった。サイクリックAMPに対して低感受性を示すことから,細胞内アデニレートシクラーゼ系を介して奏効する薬物等により修飾を受けにくいことが明らかとなった。 2.H電流を示すニューロンの形態学的特徴 最後野ニューロンは他の部位に比べて大変小さいサイズののニューロン(9-15ミクロン)により構成されているが,H電流を示す最後野ニューロンはその中でもより小さいもの(平均値10.4ミクロン,n=28)が多く観察された。このことは膜の電気的膜容量の測定値の違いとも一致しており,すなわちH電流を示す小さい細胞にはより小さい電気的膜容量が検出された。
|