研究概要 |
近年,cyclic ADP-ribose(cADPR)生合成に関与するとされるCD38のノックアウトマウスでCD38が好中球遊走に重要な役割を果たすことが明らかにされた.しかし,好中球活性化におけるCD38/cADPR系の役割は明らかではない.申請者らは15年度の研究において,ヒト好中球でfMLPおよびPAF刺激によりcADPRが産生されFKBPに作用してリアノジン受容体を活性化してCa^<2+>動員を引き起こし,遊走に関与することを明らかにしてきた.本年度はcADPRの細胞膜輸送に焦点をあて検討し以下の結果を得た. 1.細胞外へのβ-NAD^+の添加は一過性[Ca^<2+>]i上昇を引き起こし,cADPRはfMLP及びPAFの[Ca^<2+>]i上昇を増強した.fMLP及びβ-NAD^+の[Ca^<2+>]i上昇は抗CD38抗体,NADase処理により抑制され,cADPRは細胞外でCD38により産生され,細胞内に輸送されることを明らかにした. 2.β-NAD^+の[Ca^<2+>]i上昇を指標としてcADPR細胞膜輸送機構について検討し,Na^+に依存したNBMPR感受性のヌクレオシドトランスポーター(CNT)の関与を示唆した. 3.発現解析,薬理学的解析により,ヒト好中球にCNT2,CNT3,cs/csgNTの発現を認めた. 4.fMLP,PAFによる[Ca^<2+>]i上昇はNT阻害薬により抑制された. 5.fMLPおよびPAFによる好中球遊走はNT阻害薬,抗CD38抗体,NADaseにより抑制され,[Ca^<2+>]i上昇のそれと一致していた. 以上から,fMLP, PAFの刺激により,CD38細胞外活性部位においてβ-NAD^+から産生されたcADPRがCNTを介して細胞内に輸送され,[Ca^<2+>]i動態を変化させることで遊走に関与することが示唆された. 好中球と血管内皮細胞の相互作用におけるcADPRの役割については検討中である.
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