研究概要 |
好中球活性化におけるcyclic ADP-ribose(cADPR)を介する新しい情報伝達系についてヒト末梢血好中球を用いて検索し以下の成果を得た。 細胞膜透過性とした好中球でcADPRはCa^<2+>動員作用を引き起こし、cADPRがFKBP12/12.6をターゲットとして3型リアノジン受容体(RyR3)に作用する可能性を示唆した。無傷好中球でfMLP,血小板活性化因子(PAF)等の刺激により一過性の上昇に続く持続した[Ca^<2+>]i上昇を認めた。この[Ca^<2+>]i上昇はcADPR拮抗薬8Br-cADPRにより抑制され、遊走因子受容体刺激による[Ca^<2+>]i上昇にcADPRが機能していることを明らかにした。さらに、cADPRは遊走因子受容体刺激によりCD38の細胞外活性化部位でNAD^+を基質として細胞外で産生され、濃縮性ヌクレオシドトランスポーター(CNT)により細胞内に輸送されCa^<2+>動員作用を引き起こすこと、このCa^<2+>動員に基づくCa^<2+>プールの枯渇が容量性Ca^<2+>流入機構を活性化し、持続した[Ca^<2+>]i上昇に寄与することを明らかにした。更に、fMLPによる好中球遊走は外液Ca^<2+>に依存しており、cADPR拮抗薬およびCD38中和抗体,NADase, NT阻害薬により抑制された。以上より、好中球は走化因子受容体刺激に応答してcADPRがCD38により細胞外で産生され,CNTにより細胞内に輸送され,FKBP12/12.6に作用してRyR_3からのCa^<2+>動員を介して[Ca^<2+>]i動態に影響して好中球遊走に寄与するという一連の経路を明らかにした. 本研究成果は,好中球活性化における新しい情報伝達機構並びに生理・病態生理的役割解明の一助となると期待されるとともに,CD38/cADPR/CNTが好中球が関係する疾患の治療薬の開発の標的分子としての可能性を示唆するものである.
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