研究概要 |
近年、各種の膜輸送蛋白質がクローニングされ、大量の水を輸送する組織では選択的かつ速やかな水輸送を司るアクアポリン(AQP)の存在が知られてきている。そして、耳下腺の管腔膜ではAQP5の存在が認められている。私共は、糖尿病による口腔乾燥症の発症とAQP5の細胞内動態との連関性について検討した。ウィスター系雄性ラットにStreptozotpcin(45mg/kg i.v.)を投与して4週間後に実験に供した。耳下腺切片をSNI-2011(キヌクリジン誘導体)と10分間反応させた後、そのホモジネートより2000g,4000g,17,000g,400,000g, Final Sup.を細胞分画し、また、管腔膜と基底側膜はMol. Pharmacol.,61:1423,2002に準じて調製した。糖尿病ラット耳下腺のTrizol抽出液中のAQP5 mRNAは、対照群に比し有意に上昇していたにも拘わらず、耳下腺ホモジネートをSDS-PAGEに供し抗AQP5抗体を用いてWestern blottingしたところ、糖尿病群において対照群に比し低下傾向が認められた。一方、耳下腺切片を10^<-5>M SNI-2011と反応させた後の管腔膜におけるAQP5量は対照群では約3倍の上昇が認められたが、糖尿病群ではほとんど上昇が認められなかった。[^3H]QNBによる結合実験および抗M3ムスカリン受容体抗体を用いたWestern blottingにより基底側膜における受容体数は糖尿病群において対照群より約40%減少していた。糖尿病ラット耳下腺では対照群とは異なって基底側膜でもAQP5が認められた。 【結論】M3-受容体刺激によって誘導される耳下腺管腔膜でのAQP5の増量は、糖尿病ラットでは対照群に比し有意に低下し、これは、糖尿病によりラフトより管腔膜へAQP5が移動しないためであり、これが糖尿病による口腔乾燥症を発症させているものと推察された。
|