研究概要 |
高脂血症治療薬として臨床で広く用いられているスタチンに骨代謝調節作用のあることが明らかになってきた。今回、私達はスタチン類の一つであるシンバスタチンにより誘導される骨形成促進因子の検索を行った。マウス骨芽細胞株であるMC3T3-E1細胞にシンバスタチンを添加したところ、血管内皮増殖因子[vascular endothelial growth factor(VEGF)]の遺伝子発現は著明に促進された。シンバスタチンの効果はメバロン酸やゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP)の添加により完全に消失した。タンパク質のPrenylationの阻害剤であるManumycin Aの添加により再現された。また、PI3キナーゼ阻害剤であるLY294002の前処理により抑制された。VEGF受容体阻害剤を添加すると、シンバスタチンによる石灰化の促進は消失した。シンバスタチンを添加し、MC3T3-E1細胞を長期間培養すると、VEGFの遺伝子発現及びVEGF分泌量は分化した状態の細胞で著しく上昇し、石灰化の進行時期と一致していた。従って、スタチンは骨芽細胞において、タンパク質のPrenylationを抑制し、PI3キナーゼ経路を活性化させ、VEGF遺伝子の転写を促進させ、VEGFの分泌を亢進させる。VEGFはBMP-2と協力して骨芽細胞の分化を促進させ、石灰化を亢進させることが強く示唆された。骨粗鬆症の動物モデルである卵巣摘出ラットにスタチンを投与すると、単独では骨密度上昇作用をほとんど発揮しない。骨吸収抑制剤であるエストロゲン(女性ホルモン)あるいは、骨形成促進剤である副甲状腺ホルモンと併用投与すると明らかな骨密度上昇作用がみられた。スタチンの強力な骨形成促進作用はin vitroの系では顕著であるが、in vivoの系で発現しにくい(Endocrine,24,121-129,2004)。in vivoの系で、スタチンの骨形成促進作用を検討している。
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