三叉神経節(TRG)ニューロンの興奮性に対するパラクリン分泌されたSubstanceP(SP)の役割を明らかとするためにIn-vitro及びIn-vivoの条件下において顔面皮膚を支配するAβ三叉神経節TRG)ニューロン活動が顎関節炎の誘発により、変調するか否かを解析した。起炎物質(CFA)を同側顎関節に注入し顎関節炎を誘発させた。炎症群(CFA投与48時間)ラットのVon Frey hair刺激に対する機械刺激に対する逃避反射の閾値は、対照群ラットに比較して有意に減少した。炎症群ラットの関節支配のTRGニューロンのSP免疫陽性を示す細胞数は対照群ラットに比較して有意に増加していた。炎症群の顔面皮膚支配の中型-大型分離TRGニューロンのほとんど(77%)は、SP投与により濃度依存性(0.01-10μM)の脱分極性応答を示した。一方、対照群は、SPに対する脱分極性応答は少数のTRGニューロンにおいて観察された(21%)。顔面皮膚支配のTRGニューロンのSP/NKI受容体の免疫陽性細胞は炎症により有意に増加していた。顔面皮膚を電気刺激して応じるAβ-TRGユニット放電の炎症群の自発放電発現率は対照群に比較して有意に増大し、その発火頻度も有意に高い値を示した。CFA投与群で見られた自発放電発火頻度は、SPの受容体拮抗薬の電気泳動的局所投与により、電流依存性に抑制された。CFA投与群のラットAβ-TRGユニットの機械刺激に対する閾値は、対照群に比較して有意に低下していた。 これらの結果より、顎関節炎により、顔面皮膚を支配するAβ-TRGニューロンの興奮性は変調し、その効果は細胞体におけるSP/NK1受容体のup-regulationにより発現し、顎関節炎症におけるアロデニア発現の一因となる可能性が示唆された。
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