前年度までに、食物の硬さや温度のような物理的性質を条件刺激、その直後の内臓不快感を無条件刺激として呈示した場合に、化学的性質(味覚として感知する)を呈示した場合と同様に食物嫌悪学習を獲得すること、またその学習に関わる主たる脳部位が扁桃体に存在することを行動学的実験および免疫組織化学的実験により明らかにした。本年度の行動学的実験では、条件刺激を味覚と温度、もしくは、味覚と硬さといった複合刺激にした場合、ラットがどちらの刺激を優先して忌避行動を起こすかを検討した。その結果、物理的・化学的全ての刺激において味覚を最も優先させて忌避行動を起こすことを明らかにした。また、扁桃体の働きをさらに詳細に調べるために、イボテン酸を用いた脳内局所破壊実験を行った。その結果、両側性に扁桃体を広域破壊したラットは、条件刺激が化学的刺激であっても物理的刺激であっても、食物嫌悪条件づけを獲得しないことを明らかにした。
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