研究概要 |
骨芽細胞病態モデルを用いた血清除去誘導シグナルカスケードの解明 (目的)骨芽細胞は炎症性サイトカイン処理によりNFκBの活性化を伴うアポトーシス細胞死を示すこと、骨芽細胞が骨細胞に分化する過程で、骨基質に囲まれることで栄養供給が絶たれ、大半の細胞がアポトーシスを起こすことが、既報から明らかになっている。微小環境下で細胞周囲が病的な虚血状態に陥り、栄養供給が絶たれたとき、骨芽細胞がどのような運命をたどるのかを解明することは、骨代謝異常疾患と骨芽細胞との関連を探り、将来的には新規な治療法を模索するうえで重要である。本研究では、歯周疾患病態モデルとして血清除去を考え、この処理により細胞はどのような機能変化を示し、その際、どのような細胞内シグナルカスケードが惹起されるかを探求することを目的とした。 (実験結果)マウス骨芽細胞様細胞MC3T3-E1は、血清除去により24時間までに細胞増殖は停止し、細胞周期G0/G1 arrestを伴うアポトーシス細胞死が惹起されることを確認した。さらにその際,20S proteasomeからNFκBの活性化、cycline-dependent kinase(cdk)-6の減少、caspase-8,-2,-3,-9の活性化に至る高度に制御されたシグナルカスケードの存在を明らかにした(Bone35(2),507-516,2004)。各種酵素阻害剤を用いた検索から、20S proteasomeの下流においてNFκB/細胞周期G0/G1 arrestに至る経路と、NFκB/caspase/apoptosisへ至るふたつの独立したシグナルカスケードの存在を明示した。本研究は、骨芽細胞の細胞周期G0/G1 arrestならびにアポトーシス細胞死を導くシグナルカスケードを調節する重要な生体内因子として、NFκBの新規な生理的意義を明らかにした。
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