研究概要 |
平成15、16年度の実験結果を踏まえての総括的な考察行い、さらなる本研究の進展を摸索するために以下の3項目について新たな研究課題とした。 1)歯周病の病態解明にも繋がる可能性があるLPLによる破骨細胞産生機序の解明のため、Mouse primary osteoblastを用いて、RANKLシグナルカスケードの解明を試みた。結果としてRANKL産生のmain pathwayとなるsignal cascade上にNod2の存在を初めて明示した(Yang, Mogi et al., J.Immunol.2005)。 2)骨破壊疾患の代表的疾患である慢性関節リウマチの病態解明を試みた。マウス由来細胞だけではなく、ヒト単球由来破骨細胞形成評価法を確立することで、抑制的に働くIFN-γの破骨細胞分化に及ぼす影響について詳細に検討した。当初の予想と異なり、IFN-γ(+)のT細胞がRANKLの発現を介して破骨細胞形成能を有すること、慢性関節リウマチ患者の患部においてIFN-γ(+)のT細胞が多く観察されることから、慢性関節リウマチ患者における骨吸収にIFN-γ(+)のT細胞がダイレクトな役割を有する可能性を示唆した(Kotake, Mogi et al., Eur.J.Immunol, 2005)。 3)歯科領域の骨破壊疾患として歯周病とならんで顎関節症がある。顎関節症の発症機序ならびに病態解明を試みるために、健常者、顎関節症のdisk displacement with reduction, disk displacement without reduction, osteoarthritisの4群から滑液を得てRANKL, OPG, RANKL/OPG ratioを測定した。ヒト顎関節症、とくにosteoarthritis患者滑液中にRANKLが存在し、OPG量が健常者と比較して統計的有差を持って低下を示し、結果として有意にRANKL/OPG ratioが亢進することを初めて明示した。本研究結果は慢性関節リウマチや歯周病の結果と追試するものであるが、更にOsteoarthritis患者滑液がin vitroでヒト末梢単球からの破骨細胞形成ならびに活性化能を持つことを確認した。これらがOPGあるいはanti-RANKL-IgG添加にて抑えられることを確認し、Osteoarthritisの骨破壊の機序にRANKL/OPGが関わる可能性を初めて明示した(Wakita, Mogi et al., J.Dent.Res., in-revised form)。 4)結果の一部は歯科基礎医学会学術大会、日本薬理学会年会、日本生化学会大会、日本骨代謝学会学術集会、IADR(Balti USA)大会および日本口腔外科学会にて発表を行った。
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