平成15年度の実験計画に沿って、破骨細胞に発現するCl^-チャネルの分子種を検索し、骨吸収に関与するCl^-チャネルの同定を試みた。 マウス骨芽細胞と骨髄細胞の共存培養によって形成された破骨細胞よりtotal RNAを抽出し、破骨細胞に発現するCl^-チャネルmRNAをRT-PCR法にて調べた。本実験における無菌操作は、本年度の備品予算で購入したキャビネット(形式:安全キャビネットKS2、機種は機能性を考慮し当初予定していたMHE-130AJから変更)を使用した。 破骨細胞には、CLC型Cl^-チャネル、CLC-3、4、5、6、7のmRNAが確認された。さらに、CLC-3には3種のisoform (short、middle、long)が存在することが分かった。これらのCLC型Cl^-チャネルmRNAは骨芽細胞にも発現していた。しかし、CLC-3 mRNAの発現レベルは、破骨細胞が骨芽細胞より高かった。そこで、特にCLC-3に注日し、CLC-3の骨吸収への関与を検討した。CLC-3 isoformに特異的なアンチセンスオリゴを導入した破骨細胞を象牙切片上で培養し、形成された吸収窩の面積を指標に骨吸収活性を評価した。対照には、センス、および、ナンセンスオリゴを導入した破骨細胞を用いた。また、CLC-7ノックアウトマウスでは、骨吸収活性が抑制されることが報告されているため、CLC-7アンチセンスオリゴを導入した破骨細胞の骨吸収活性と比較した。その結果、CLC-3アンチセンスオリゴの導入は、骨吸収活性を低下させることが分かった。特に、CLC-3 short formアンチセンスオリゴ導入による骨吸収活性の抑制は、CLC-7アンチセンスオリゴの抑制効果に匹敵した。以上の結果より、破骨細胞による骨吸収にはCLC-7のみならずCLC-3も関与していることが明らかになった。本研究成果の一部は、第45回歯科基礎医学会総会(平成15年9月、盛岡市)にて報告した。
|