平成15年度において、破骨細胞にCLC-3 Cl^-チャネル(CLC-3)が発現していること。また、破骨細胞へCLC-3を標的としたアンチセンスオリゴ(CLC-3 As)を導入すると骨吸収活性が低下することが分かり、CLC-3の骨吸収への関与が示唆された。本年度は、まず、この結果の妥当性をRNAi (RNA interference)法を用いてさらに検討した。 CLC-3を標的としたsiRNA (CLC-3 siRNA)を破骨細胞へ導入すると、象牙切片上に形成される吸収窩面積がnonsense siRNAを導入した対照群に比べて有意に減少した。この骨吸収抑制効果はCLC-7 siRNA導入による抑制に匹敵した。また、これらのsiRNAの導入は破骨細胞の生存率に影響しなかった。これらの結果は、アンチセンスオリゴを用いた結果と一致した。従って、CLC-3の発現抑制による骨吸収活性の低下は、破骨細胞数の減少によるのではなく、破骨細胞に備わる骨吸収機構が損なわれた結果と考えられた。 次に、破骨細胞に発現するCLC-3の機能について検討した。破骨細胞を低浸透圧刺激すると外向き整流性Cl^-電流が活性化された。この電流のCl^-チャネル阻害剤(DIDS、NPPB、tamoxifen)に対する感受性、および、陰イオン透過性(I^->Br^-≧Cl^->gluconate^-)は報告されているCLC-3の性質に一致した。しかし、このCl^-電流はCLC-3 Asを導入しても影響されなかった。そこで、CLC-3が細胞内Cl^-チャネルとしてオルガネラの酸性化に関与している可能性を調べた。その結果、CLC-3 As導入により破骨細胞内の酸性化が抑制されることが分かった。以上の結果より、破骨細胞に発現するCLC-3は細胞内イオンチャネルとしてlysosomeを始めとするオルガネラの酸性化に係わる重要な機能分子である可能性が示唆された。(本研究成果の一部は、第46回歯科基礎医学会、および、第26回米国骨代謝学会にて発表した。)
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