本研究では、破骨細胞の骨吸収機能に関わるCl^-チャネルの分子種を同定し、その機能的役割を明らかにした。マウス破骨細胞にはすでに報告されているClC-7Cl^-チャネル(ClC-7)以外にも複数のClCが発現していした。一方、破骨細胞から誘導したCl^-電流の性質は電気生理学的および薬理学的にClC-3の性質に類似した。そこで、ClC-3の骨吸収への関与を検討した。その結果、ClC-3の発現レベルをアンチセンスまたはRNA干渉(RNAi)法により抑制すると骨吸収活性が低下すること。また、ClC-3ノックアウト(KO)マウスから誘導した破骨細胞はwild-type(WT)由来の破骨細胞に比べて骨吸収活性が低いことが分かった。従って、ClC-3は骨吸収に関与する重要な機能分子であることが明らかになった。次に、ClC-3の骨吸収における具体的な機能を検討した。破骨細胞から誘導したCl^-電流はClC-3活性を中和する抗ClC-3抗体を投与しても影響されなかった。また、ClC-3KOとWT由来の破骨細胞から誘導したCl^-電流の性質に有意な違いは認められなかった。これらの結果より、ClC-3が細胞膜のCl^-輸送に関与している可能性は低いことが分かった。そこで、ClC-3の細胞内イオンチャネルとしての機能を検討した。破骨細胞内には酸性化したオルガネラが広範に分布していたが、アンチセンスまたはRNAi法によるClC-3の発現抑制によりその酸性化が減弱した。また、ClC-3KO由来破骨細胞ではオルガネラの酸性化がWTに比べて弱かった。このオルガネラ酸性化と骨吸収活性との間には良い相関が見られた。以上の結果より、破骨細胞に発現するClC-3は細胞内のイオンチャネルとしてオルガネラ膜のCl^-輸送に関与し、骨吸収に必要とされるエンドゾームやリソゾームなどの酸性化に寄与していることが明らかになった。
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