研究概要 |
我々がヒト唾液より単離した高プロリン蛋白質P-BとN末部分が同一である蛋白質がウシ歯胚にも存在することがStrawitchらにより報告されているので、ウシ歯胚のmRNAを用いてPCRクローニングを試みたところ、P-BcDNAがクローニングされ、成熟蛋白質領域と一部3'非翻訳領域の塩基配列がヒトP-BcDNAの該当部と一致した。従ってウシ歯胚に存在するP-Bについては歯胚が合成サイトであり、ヒト唾液P-Bと同一アミノ酸配列を有することがわかった。 ヒトとウシのP-BcDNAの塩基配列が一致する領域内にあるプライマー・ペアを用いて定量PCRを行なったところ、調べた全ての組織で発現がみられたが、組織間で発現量が大きく異なり、心臓、顎下腺、歯胚、腎臓で大である。ウシ薗胚由来P-BcDNAの3'非翻訳領域、約230塩基は大腸菌のラクトースオペレータを含む領域とほぼ相同である。従って、ウシ歯胚P-BcDNAにはP-B特異的配列と大腸菌特異配列とのキメラ構造より成るものがある。 我々は、ヒト細胞の癌化や分化に於いてP-B発現量が変動するという予備実験データを得ており、また、文献的にもレチノールによってヒト白血病細胞の分化時にP-Bの発現が減少するというデータがあるので、癌化や分化誘導時に於けるP-B発現の変動を定量的に捕らえることを試みたが再現性のある結果は得られていない。 そこで、P-Bと種々の物質や細胞との相互作用の解析によりP-Bの機能を解明したいと考えており、現在、P-Bを大腸菌により大量発現させる為ベクターを構築中である。P-Bの発現組織分布と発現量や、P-BmRNA中に存在するキメラ構造、P-Bと諸物質、細胞間との相互作用等の意義の探索を通して、P-Bの生理機能,とりわけ癌化や分化との関わりが明らかになることを期待している。
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