"ヒト全唾液に含まれるTypeIIに属する高プロリン蛋白質P-Bと同じアミノ酸配列を有する蛋白質がウシ幼若エナメル質中に存在する"と言う報告に基づいて行ったRT-PCR法によるP-Bの組織分布の研究は、P-Bが唾液腺だけでなく歯胚や心臓、腎臓をはじめ他の多くの組織で発現していることを示した。この結果はP-Bが唾液および唾液腺に於いてのみ作用する蛋白質でないことを示している。 ウシ歯胚からのP-Bクローニング過程で得られた1クローンはヒトP-B cDNA相同部位と大腸菌ゲノムのラクトースオペレータを含む領域との相同部位からなるキメラ構造を有していた。このキメラ構造とP-Bの発現制御の関係の有無については不明である。 次いで機能検索に供するP-Bを常時供給する為に大腸菌によるP-Bの発現を試みた。本研究開始以前にpETベクターを用いて発現を試みたがP-Bは不溶部にしか検出されなかった。pCold Shock Vector I/BL21を用いた本研究では可溶部にその発現を認めた。条件の改善により収量増加が可能であると考えている。 大量調製したP-Bを用い、分子間相互作用に基づいて細胞分化に於けるP-Bの役割を解明する予定であったが、十分量のP-Bを発現させることが出来なかった為、期間中に解明することが出来なかった。
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