【概要】本研究は、唾液腺の再生過程において腺実質細胞(腺房細胞、導管細胞、筋上皮細胞など)が細胞死(アポトーシス)や細胞増殖を起こしているのか、もしそうであれば、どの時期にどの程度起こっているのかを明らかにし、唾液腺組織再生過程における各種腺実質細胞の動態とその意義について解明することを目的としている。平成15年度では動物実験、各種ブロックの作製、組織学的検索、PCNAによる免疫組織化学的検索、TUNEL法による検索がほぼ終了した。 【結果】実験対象のラット顎下腺は7日間の導管結紮により萎縮した。腺組織内には多くの導管が残存していたが、腺房の多くは消失し、残存しているものは少なかった。結紮解除3日目には新生した腺房細胞がみられるようになり、以後、その数の増加と成熟化が認められた。再生過程で多くの腺房細胞はPCNA陽性を示し、再生4〜5日目にピークを示した。これに対して、PCNA陽性を示す導管細胞は再生過程では常に減少傾向を示していた。一方、TUNEL陽性細胞は腺房細胞、導管細胞ともに少数ながら観察された。以上の結果より、萎縮顎下腺の再生過程では細胞増殖のみならず、アポトーシスも関与していることが示唆された。 【今後の展望】平成16年度は免疫二重染色(PCNAとアクチン)およびTUNEL二重染色(TUNELとアクチン)を行い、筋上皮細胞についても同様に検索する。さらに、免疫組織化学的およびTUNEL法によって同定された細胞増殖やアポトーシスを電子顕微鏡を用いて確認し、それらの結果より、唾液腺再生過程における細胞増殖とアポトーシスの意義を明らかにする予定である。
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