研究課題/領域番号 |
15591994
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
森崎 市治郎 大阪大学, 歯学部附属病院, 教授 (30116115)
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研究分担者 |
天野 敦雄 大阪大学, 大学院・歯学研究科, 教授 (50193024)
秋山 茂久 大阪大学, 歯学部附属病院, 助教授 (00283797)
村上 旬平 大阪大学, 歯学部附属病院, 助手 (70362689)
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キーワード | ダウン症候群 / 歯周炎 / 歯肉上皮細胞 / 歯肉線維芽細胞 / Porphyromonas gingivalis / 付着 / 侵入 |
研究概要 |
ダウン症候群(DS)は、重篤で進行性の歯周疾患を早期に発症しやすいことが知られている。我々は、これまで主要な歯周病原細菌であるPorphyromonas gingivalisが、DS患者の歯周ポケットより高頻度に検出されることを示してきた。一方で、DS歯周組織のP.gingivalis感染に対する宿主反応についての知見はこれまで得られていなかった。我々は、培養が難しいとされるDS歯肉上皮細胞(HGE)の培養法の改良および、HGEとその下部組織である歯肉線維芽細胞(HGF)にP.gingivalis OMZ314株を感染させ、共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察を行った。 DS由来HGEの培養では、無血清培地のほうが歯肉上皮を選択的に培養できると考えられた。しかし、無血清培地を用いてもDS由来HGEの培養は困難を伴うこと、これには過剰染色体による細胞の分裂と維持に関わるタンパクの異常やtelomereの減少などが原因と推察された。DS由来HGEに対しては、健常者のHGEよりもP.gingivalisが付着・侵入しやすいことが示された。 一方P.gingivalisがHGFに付着・侵入するとの報告が最近なされている。DS由来HGFに対しては、健常者由来HGFよりもP.gingivalisが付着・侵入しやすいことが示された。このことから、DSでは健常者に比較して、HGEだけでなく、その下部にあって歯周軟組織のほとんどを占めるHGFも、P.gingivalisに対して易感染性であることが示された。 さらに細胞に付着あるいは侵入したP.gingivalisを共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察した結果、HGEとHGFのいずれも、健常者由来の細胞よりDS由来の細胞でP.gingivalisが多く侵入している様子が観察された。 以上のことから、DS由来細胞は、P.gingivalisに対してin vitroで易感染性を示すことがわかった。このことはDSの歯周組織はP.gingivalisに易感染性であり、同菌が早期に定着して歯周疾患を発症させる重要な因子となることを示唆し、DSにおける重篤な歯周疾患を生じる要因のひとつとなると推察された。
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