研究概要 |
歯周炎における上皮の深行増殖に,歯周組織由来の線維芽細胞が合成・分泌するフィプロネクチンが関与するのかどうかを,株化歯肉上皮細胞に対する走化活性を指標として検討した。その結果,線維芽細胞の無血清培養上清中には,フィプロネクチンおよびラミニン-8/9,-2/4が含まれており,これらの細胞外マトリックス分子が株化歯肉上皮細胞に対して走化活性を有していることを明らかにした。また,部分精製したラミニンに対する上皮細胞の走化活性は,インテグリンα3またはα6のブロッキング抗体によって部分的に阻害された。さらに,組織における遺伝子発現研究のための試料保存における至適条件を探るため,Biobank Projectに参加した。その結果,組織のままで試料を保存すると,RNAは室温でも24時間は安定であること,および組織中の遺伝子発現の変化は4℃で保存すると最小に抑えられることが判明した。また,歯肉溝滲出液を用いた歯周病の病態把握をより正確に行うため,サイトカインアレイを用いてタンパクのプロファイリングを行った。その結果,これまでに報告されていなかった10種類のサイトカイン(GRO, Ang, IGFBP-3,GDNF, PARC, OSM, FGF-4,IL-16,LIGHT, P1GF)を新たに検出することができた。これらの結果から,歯周病の病態解明には炎症性サイトカインばかりでなく,成長因子も含めた解析が有効であることが示唆された。最後に,PDGF-Bを強制発現させたsis-NIH3T3細胞の自発的細胞移動が,フィプロネクチンおよびラミニンで阻害されることを見出した。また,その活性部位のひとつはRGD配列であることが判明した。
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