研究課題
基盤研究(C)
先行しておこなわれた骨梁標本での歯科用CTでの実験においてほとんど同一の骨梁が必ずしも同一画素にならないことが判明した。この現象は標本の外形に大きく依存し、かつ被写体が制限視野内に収まる大きさにおいても存在した。従来歯科用CTでのCT値の不安定性は照射視野が非常に狭いため、いわゆる不完全投影データしか得られないためであるとされてきた。しかしながら、ファントムが制限視野内に収まる大きさでもCT値の不安定性があるため、この説明のみでは成立しない。そこで全身用CTでのCT値の限界に近いX線減弱(通常のCT値(12bit)で上限(3000H.U.)以上)をもつCTアルミ+銅(5%)合金の円錐ファントムの全身用CTと歯科用CTでの撮影実験をおこ投影データそのものあるいは画像再構成において非線形部分の存在を明らかにした。すなわちCT値の不安定さはすべてを小照射野によるものではないことが明らかになった。この点では歯科用CTは通常の全身用CTの小型版ではなく、デジタルトモセンシスに近い撮像方法であることが判明した。MD-CTとの比較ではMTFを考慮していないので総合指標としては不明であるものの、検出能は歯科用CTが全身用MD-CTに比べ特に優れたものではないことが明らかになった。特にタングステンワイヤー10μの描出は歯科用CTでは安定しないがMD-CTでは安定して描出された。ヒドロオキシアパタイトを使用したマイクロファントム作成をおこなった。検査結果は300μの径に対して20μ程度の誤差であり十分満足のいくものであった。形状についてはこれまでの研究結果を踏まえてアーチファクトや角柱の不安定要因が入らないように設計されている。本ファントムを4列のマルチ検出器型CTで撮像をおこなったところ500μの径では十分安定に描出されたが、400μでは半分であり300μでは検出されなかった。一方スリットでは250μではすべて検出された。歯科用CT3DXでは全てを描出することができた。この点で歯科用CTの優位が示された。