舌発がんにおける炎症関連酵素、PPARsの関与とその制御による発がん防御

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15592007
• 研究機関: 金沢医科大学
• 研究代表者: 田中 卓二 金沢医科大学, 医学部, 教授 (40126743)
• 研究分担者: 甲野 裕之 金沢医科大学, 医学部, 講師 (20221236)
• キーワード: ヒトプロト型c-Ha-ras / トランスジェニックラット / 4-NQO / 舌発がん / 感受性 / 炎症

研究概要

ヒトプロト型c-Ha-rasトランスジェニック(Tg)ラットは乳腺、食道、皮膚、膀胱において高発がん感受性を示すが、口腔(舌)における発がん感受性の検討はなされていない。そこで、本年度は、ヒトプロト型c-Ha-rasトランスジェニックラットにおける4-NQO誘発舌発がん感受性を検討し、併せて本モデルにおける炎症の関わりを追求する目的で動物実験を行なった。
7週齢の雌雄SDTgラット(雄14、雌19)、Wildラット(雄19、雌16)に4-NQO(20ppm)を8週間飲水投与し、実験開始後8週、10週、12週、14週、18週時に動物を犠牲死させ、経時的に舌、食道病変の発生状況を観察し、病理学的解析を行った。その結果、舌扁平上皮がんの平均発生個数/ラツト(発生頻度)は、雄Tgラットで実験開始後8週で1.00個(2/2匹)、10週で1.00個(1/1匹)、12週で1.50個(2/2匹)、14週で2.50個(2/2匹)、18週で5.50個(2/2匹)、22週で3.00個(5/5匹)発生し、雄Wildラットでは、実験開始後8週で0個(0/2匹)、10週で0個(0/2匹)、12週で0.50個(1/2匹)、14週で0個(0/2匹)、18週で0個(0/2匹)、22週で0.40個(5/5匹)発生した。雌Tgラットでは、実験開始後8週で0.50個(1/2匹)、10週で0個(0/1匹)、12週で0.50個(1/2匹)、14週で0.67個(2/3匹)、18週で2.33個(3/3匹)、22週で1.13個(5/8匹)発生し、雌wildラットでは、実験開始後8週で0個(0/2匹)、10週で0個(0/1匹)、12週で0個(0/2匹)、14週で0個(0/2匹)、18週で0.50個(1/2匹)、22週で0.43個(2/7匹)発生した。また、これら発生した扁平上皮がんはすべて高分化型であり、浸潤度はこれまでの4-NQC投与雄性F344ラットよりも高度なものであった。さらに、異形成の発生やその周囲に炎症性細胞・マスト細胞の浸潤が高頻度に認められた。
これらの結果から、本Tgラットの4-NQOに対する発がん感受性は、雌雄ともWildラットよりも高く(雄>雌)、このモデルを利用した化学物質の発がん修飾作用や舌発がん物質の検出が可能と考えられた。現在、舌発がんへの炎症の関与の有無を検討中であり、未処置ラット舌上皮におけるras蛋白発現も解析中である。

研究成果

• [文献書誌] Koujiro Yoshida, Takuji Tanaka, et al.: "A COX-2 inhibitor, nimesulide, inhibits chemically-induced rat tongue carcinogenesis through suppression of cell proliferation activity and COX-2 and iNOS expression"Histology and Histopathology. 18・1. 39-48 (2003)
• [文献書誌] Takuji Tanaka, et al.: "A novel geranylated derivative, etyl 3(4'-geranyloxy-3'methoxyphenyl)-2-propenoate, synthesized from ferulic acid suppresses carcinogenesis and iducible nitric oxide synthase"Oncology. 64・2. 166-175 (2003)
• [文献書誌] Koujiro Yoshida, Takuji Tanaka, et al.: "Inhibitory effects of troglitazone, a peroxisome proliferator-activated receptor γ ligand, in rat tongue carcinogenesis initiated with 4-nitloquinoline 1-oxide"Cancer Science. 94・4. 365-371 (2003)
• [文献書誌] Keiko Sakata, Takuji Tanaka, et al.: "Inhibition of inducible isoforms of cyclooxygenase and nitric oxide synthase by flabonoid hesperidin in mouse macrophage cell line"Cancer Letters. 199・2. 139-145 (2003)
• [文献書誌] Takuji Tanaka, et al.: "A novel inflammation-related mouse colon carcinogenesis model induced by azoxymethane and dextran sodium sulfate"Cancer Science. 94・11. 965-973 (2003)
• [文献書誌] Rikako Suzuki, Takuji Tanaka, et al.: "Dietary protecatechuic acid during the progression phase exerts chemopreventive effects on chemically induced rat tongue carcinogenesis"Asian Pacific Journal of Cancer Prevention. 4・4. 319-326 (2003)