研究概要 |
本年度は、簡略化ステップ型接着システムのうち、とくに最近臨床での使用頻度が増加している3種の1ステップ型接着システムの象牙質に対する短・長期的接着性能に関する研究を主に行った。 1ステップ型接着システムのClearfil S^3 Bond (S3,Kuraray),G-Bond (GB,GC),Absolute (AB,Dentsply/Sankin)について100000回サーマルサイクリング試験前後の接着強さを測定したところ、S3は37%(31.9MPaから20.2MPaへ)減少し、ABは55%(29.9MPaから13.6MPaへ)、G-Bondは82%(29.9MPaから5.4MPaへ)減少した。 接着初期の象牙質界面をTEM観察したところ、S3とGBでは幅約数百nmのナノ相互作用層(NIZ)型であり、象牙質表層の脱灰が弱い界面であった。特にGBでは界面に層分離が認められ、接着処理時に強いエアブローが必要であるため術式感受性が高いことが示唆された。ABでは、接着材のpHが低いため、幅約2μmのいわゆるハイブリッド層形成型の界面を示した。 100000回サーマルサイクリング試験後の接着界面は、S^3とABでは初期と同様のTEM像を示した。一方、GBでは超薄切片作製時に多くの試料が界面で破壊し、十分なTEM観察ができなかったが、一部界面の劣化を示す像が観察された。 以上の結果より、1ステップ型接着システムでは、材料によりサーマルサイクリングの影響の程度は異なるものの、何らかの変化(劣化)が象牙質接着界面に起こっていることが示唆された。
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