研究概要 |
われわれは,従来から口腔内における辺縁漏洩の客観的な臨床診断法を確立するため,浸透探傷法の応用による新たな電気的辺縁漏洩診断法を考案し,基礎的研究を進めてきた.本研究は,色素浸透後の微小な辺縁漏洩の状態を連続的にとらえた立体的辺縁漏洩解析法を確立し,in vitroとin vivoにおける実験系で電気的辺縁漏洩診断法による評価結果と比較検討して,口腔内の修復物に対する本診断法の実用化を目指すものである.本年度は,間隙の発生部分を立体的に表す辺縁漏洩評価法の確立をめざして,高倍率実体顕微鏡とコンピュータ解析による間隙発生部分の立体画像構築と間隙量の評価を試みた.すなわち,健全ヒト抜去大臼歯の頬側または舌側の歯頚部に円形窩洞を形成し,象牙質接着システムによる歯面処理後,コンポジットレジンを充填した.そして,歯冠部から歯の長軸と垂直に歯質を削除し,100μmごとに窩洞断面を露出させた.その後,高倍率実体顕微鏡にて窩壁における間隙の有無を観察し,窩洞の各断面の画像を採得した.その画像を用いて間隙発生部分の立体画像構築を行った結果,間隙は歯根側窩洞辺縁部および窩底部に多く認められ,窩洞表面積に対する間隙発生部の割合はClearfil Liner Bond IIΣ(クラレ)で41.7±6.3%,Single Bond (3M)で38.2±3.9%であることがわかった.これまでの研究で,画像採得条件やデータ処理方法の検討を含め,立体的辺縁漏洩評価法が確立できた.現在,この立体的辺縁漏洩評価法によって,電気的辺縁漏洩診断法による辺縁漏洩の評価結果と実際の辺縁漏洩量の関係をin vitro実験系で解析している.
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