研究概要 |
本研究は,口腔内における辺縁漏洩の客観的な臨床診断法を確立することを目的として,色素浸透後の微小な辺縁漏洩の状態を連続的にとらえた立体的辺縁漏洩解析法を確立し,われわれが考案した電気的辺縁漏洩診断法による評価結果と比較検討して,口腔内の修復物に対する本診断法の実用化を目指すものである.研究期間の最終年度になる本年度は,電気的辺縁漏洩診断法による辺縁漏洩の評価結果と,昨年度に基礎的実験を行ってin vitro実験系で確立した立体的辺縁漏洩解析法による実際の辺縁漏洩量の関係を,in vitro実験系で解析した.すなわち,ヒト抜去大臼歯の頬側または舌側の歯冠部に,規格窩洞形成器で円形窩洞の形成を行い,通法にしたがってコンポジットレジン充填を施した.その後,電気的に辺縁漏洩の状態を評価するため,窩洞形成前,コンポジットレジン填塞物の研磨後,10000回まで400gの荷重負荷後に,修復物辺縁部のコンダクタンス変動量の測定をそれぞれ行った.さらに,試料を色素浸透に供し,100μmごとに露出させた窩洞断面の画像から立体画像構築を行って,実際の辺縁漏洩量を求めた.その結果,電気的辺縁漏洩診断法による辺縁漏洩の評価結果と実際の辺縁漏洩量は相関していることがわかった.引き続いてビーグル犬での電気的な辺縁漏洩の評価結果と辺縁漏洩量の関係の検索を行ったが,現有備品ではコンダクタンス測定時の負荷電圧が小さく,ノイズが多数発生することから,in vivo実験系への応用は今後の課題として残った.しかし,本研究により,立体的辺縁漏洩解析法の確立と,修復物の辺縁漏洩の評価に対する電気的辺縁漏洩診断法の有用性が実証され,臨床応用には電圧および周波数の最適化が重要であることが判明した.
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