研究概要 |
本研究では,新たなバイオフィルム抑制・排除療法として歯科用レーザーに着目し,本年度はレーザーのグラム陽性のバイオフィルム細菌に対する殺菌効果を形態学的及び細菌学的に検索することを目的とした. 研究実施計画に従って,Enterococcus faecalis, Lactobacillus casei, Streptococcus mutansを供試細菌として,Modified Robbins Device(MRD)を用いてヒドロキシアパタイト(HA)ディスク上に各々の細菌種のバイオフィルムを形成した.各HAディスク上のバイオフィルムに対しEr-YAGレーザーを照射(30-60mJ,10s,10pps)し,得られたサンプルを走査型電子顕微鏡とATPアナライザーにて検索した.その結果,いずれの細菌種においても形態学的にはバイオフィルムの剥離が観察され,個々のバイオフィルムにおいて菌体の変形がみられた.ATP量においても,全ての細菌種においてコントロール群に比べて減少傾向がみられ,バイオフィルム内の生菌数が減少しているものと推察された.現在,バイオフィルム抑制に有効な照射条件をさらに詳細に検討するとともに,グラム陰性細菌種に対する検索を行っている. 一方,MRDで形成したPorphyromonas gingivalisバイオフィルムに対し,3種類の抗菌剤を作用させ,抗菌効果をATP測定法により検討した.3種の抗菌剤,グルコン酸クロルヘキシジン,ミノサイクリン塩酸塩,メトロニダゾールのうち,クロルヘキシジン作用時には1日後にATP量が約1/1,000まで減少し,その後も7日目まで持続的に減少した.しかしながら,ミノサイクリンとメトロニダゾールのATP量の変化は7日後で約1/2であった.これらより,浮遊系のP.gingivalisには抗菌効果を有するミノサイクリンやメトロニダゾールも,P.gingivalisバイオフィルムに対しては著明な抗菌効果を発揮しないことが明らかとなった.
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